実績紹介

相続対策・法人活用  賃貸物件の承継に関するご相談

2017/06/08

本件の特徴

1)個人所有のアパートを相続対策として信託し、信託受益権を法人に譲渡 

2)「資産承継プランニング」を現状整理やリスク分析シミュレーションをしてから手続きを実行 

3)根抵当権付きの不動産について、信託設定登記を実現 

 

ご相談内容

今回ご紹介する事例は、ご夫婦で複数棟所有されている賃貸アパートの一部を息子さんに承継する方法についてお悩みのK様ご家族からのご相談でした。弊社にご相談にいらっしゃるお客様は、財産を所有するご本人か、そのご家族のいずれか片方であることが多いのですが、本件では一回目の打ち合わせからご本人と息子さんが一緒に参加されました。

 K様ご夫妻は、それぞれが複数棟の賃貸アパートを所有されています。ご夫妻には3人のお子さんがおり、将来的には3人にアパートを承継する方向で考えていました。特に、次男は物件の運営管理に積極的であったため、ご夫妻は将来的に賃貸アパートの経営をうまく続けていくためには早期の経営ノウハウの移転が必要と考えて、まずはお持ちの物件から何棟かを次男の管理に移すことを検討されていました。また、手続きに際しては法人(資産保有会社)の活用も希望されていました。

手続きを実際に進めていくためには、下記のように複数のポイントを整理する必要がありましたので、まずは弊社の資産承継プランニングサービスから始めていただくこととしました。

 どの物件を次男の管理に移すか?

 どのような手法を使うか?

 現状の相続では相続税がいくら発生するか?

 

弊社のサービス

弊社の資産承継プランニングは、『現状の整理』、『相続や認知症に関するリスクの分析』、『ご提案』の3つから構成されます。

また、本件ではK様ご夫妻それぞれがプランニングの対象となりました。

『現状の整理』では、所有する財産をリストにし、そこから見込まれる相続税の額(二次相続における相続税の額を含む)を試算しました。また、所有する賃貸アパートの収益力や借入金の返済を含めたキャッシュフローの分析を行いました。これらの情報を整理した段階でK様と再度打ち合わせを行い、今回の手続きの対象とする物件の選定を行いました。資産保有会社を活用する希望にお応えするために、次男を受託者、K様ご夫妻を受益者とする家族信託を設定し、その後に信託受益権を資産保有会社に移転するスキームをご提案しました。スキームに関する詳細は以前ご紹介した事例(こちらからご覧になれます)と共通する点もあるため、この部分の記載は割愛させていただきます。

 

これらの手続きを行うことで達成されたK様ご夫妻の希望は以下の通りとなります。

・受託者である次男に対して物件運営を任せることができる(ノウハウの承継)

・将来的な相続税の負担減少

・所得税から法人税に変わることでの税負担の減少

・社会保険の加入による保険料の負担減少

・不動産を会社に移転する際に通常発生する登録免許税と不動産取得税の負担減少 

ちなみに、本件は手続き書類に対する関係者の捺印が合計で約90個となるなど、書類数の面からも非常にボリュームの大きい案件でした。書類の多さから、最後にはお客様の印鑑が一部欠けてしまうほどでした。また、融資元の金融機関にとって、本件は初めての家族信託でした。しかしながら提案の初期段階からスキームに関する説明や、金融機関への影響を仔細に説明したことで、非常に協力的に対応いただきながら進めることができました。

本件では、金融機関が根抵当を設定しており、この点も案件を進めるに際して慎重な対応を要しました。以下は、根抵当が設定された不動産に関する信託の手続きです。非常に専門的な内容となりますが、ご紹介させていただきます。

 

信託登記と根抵当権

 信託設定後の不動産について、受益権売買によって当初受益者から新受益者へ変更することがあります。この場合に、既存抵当権が設定されていると新受益者が債務引受を行い、抵当権に対して債務者の変更登記を行うことがほとんどです。

 ところが、今回のケースでは既存で設定されている担保権が確定前の根抵当権でした。当初受益者であるKさんの本件不動産取得にかかる債権について新受益者である資産保有会社が債務引受をしても、抵当権とは扱いが異なり当然にその根抵当権の債務者が変更されるものではありません。また、その根抵当権者たる金融機関とKさんの取引は継続していますし、取引上すでに存在している担保債権すべてを資産保有会社が引き受けるわけでもありません。

 そこで金融機関と打合せたところ、現在の債務者であるKさんはそのまま残し、新受益者である資産保有会社も債務者として追加しかつ債務引受をした債権も特定債権として被担保債権とする方針になりました。これで、Kさんとの取引も今まで通り継続しつつ、新たに資産保有会社とも安心して取引を行うことができるようになりました。Kさん及び資産保有会社からもその方針についての承諾を得たうえで、今回は下記の通りの変更登記を行うこととなりました。

 

【変更前】 債務者       Kさん

      被担保債権の範囲  銀行取引 手形債権 小切手債権

 

【変更後】 債務者       Kさん

                資産保有会社

      被担保債権の範囲

       Kさんについて        銀行取引 手形債権 小切手債権

       資産保有会社について 銀行取引 手形債権 小切手債権

                      年月日債務引受(旧債務者Kさん)にかかる債権

 

 なお、根抵当権の変更登記当事者は権利者として金融機関、義務者として受託者である次男になります。今回は信託契約上、既存担保権の変更を行う場合は受益者の承諾を要することにしましたので、資産保有会社の承諾も記載をしました。

継続的な取引関係を担保する根抵当権付きの不動産であっても、金融機関のご理解とご協力を得ながら進めることで取引の幅を広げながら信託を活用することが可能であることを実感する事例となりました。

  


賃貸物件管理の相続対策でも、つなぐ相続アドバイザーズ

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