認知症対策 ~財産管理・相続について~

認知症対策の必要性

認知症とは

認知症とは、さまざまな原因で脳の神経細胞が破壊され、又は減少することによって起こる認知機能が低下した状態をいいます。その原因として最も多いのが「アルツハイマー型認知症」とされています。認知症は、単に老化が進んだ状態とは異なるものであり、記憶障害や理解・判断力の障害等の中核症状と妄想、抑うつ、徘徊、興奮等の周辺症状が起こることがあります。

誰もがなりうる認知症

2012年のデータでは、65歳以上の方の約15%が認知症患者であるとされており、この比率と患者数は年を追うごとに増加していくものと考えられています。例えば、各年齢層の認知症有病率が2012年以降一定であるとした場合でも、2030年には65歳以上の5人に1人が、2060年には65歳以上の4人に1人が認知症患者になるとされています。さらに、これよりも有病率が高くなるとの予測もあり、認知症は全く他人事ではなく、自分や家族の誰かが認知症になると考えることが当たり前の時代が到来することは間違いありません。

引用元:厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業)日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究総括研究報告書
研究代表者 二宮 利治(九州大学大学院医学研究院附属総合コホートセンター・教授)

認知症と財産管理

認知症になってしまうと、判断能力が低下してしまい、損得勘定といった妥当な財産に関する判断ができなくなってしまい、場合によっては詐欺被害に遭うといった恐れが出てきます。それだけでなく、一定程度まで判断能力が低下してしまうと、法律的に「意思能力」がないものとみなされ、法律的な取引行為ができなくなってしまいます。具体的には、預貯金の解約ができなくなり、現金の引き出しをさせてもらえなくなるといったことや、所有する不動産の売却をさせてもらえなくなってしまう、ということが挙げられます。

認知症による問題

このように認知症により取引行為ができなくなってしまうと、財産が動かせなくなってしまい、いわゆる「凍結状態」になってしまいます。こうなってしまうと、財産を所有する本人の相続人が代わりに取引行為をすることも認められませんし、本人が委任状を書いたとしても無効となってしまいます。そうすると、本人が亡くなるまでの間は財産が動かせなくなってしまうことが原則となり、本人が施設に入る費用を捻出できなくなったり、子供に譲ろうとしてた財産も譲れなくなってしまいます。このことから、認知症になってしまう前に対策を取っておく必要性は極めて高いということがいえます。

認知症の主な対策法

認知症になってしまったら

財産を所有する本人が認知症になってしまったら、本人の財産は「凍結状態」になってしまうのが原則です。こうなってしまった場合には、裁判所に成年後見開始の申立てを行い、本人に成年後見人をつけるよりありません。成年後見人がついた場合には、本人に代わって成年後見人が財産の管理処分を行うことができるようになります。これを法定後見といいます。

成年後見の問題点

しかし、法定後見により成年後見人がついたからといって、本人や家族が望むような財産の管理処分ができるわけではありません。
1つには、成年後見人に誰が就任するかを選べないという問題があります。裁判所に申立てを行うとき、候補者を指名することはできますが、裁判所がその候補者を選任するとは限らず、財産額が大きい場合などには見ず知らずの弁護士等が選任されることが多くあります。このため、本人や家族の意向を聞き入れてもらえないことがあります。

もう1つには、成年後見制度の目的が、本人の財産の保護にあるということが挙げられます。このため、成年後見人が本人の財産の利殖目的の取引を行うことはできませんし、家族であったとしても本人の財産を減らしてそれを譲るようなことはできません。これらのことから、成年後見人がついたとしても、基本的には本人や家族の望むような財産の管理処分ができないと考えた方がよいでしょう。

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事前対策の重要性

このように、本人が認知症になってしまってからは、十分な財産の利用、承継の対策はできません。このため、認知症になってしまうまえの事前対策が重要な意味を持ちます。
現在行われている事前対策としては、家族信託と任意後見契約が代表例として挙げられます。
しかし、このうち、任意後見契約を利用する場合には、結局、裁判所の監督下におかれてしまうため、完全に本人が望んだような任意の財産の管理処分は実現できるとは限りません。

このため、現在最も有力とされている方法が家族信託となります。家族信託であれば、誰を受託者とするかについても本人の意向に従って選ぶことができますし、信託契約の中で定めることは、どのような要望であれ受託者として財産を預かる人の責任において実現されます。また、家族信託を用いることにより、本人が亡くなった後の財産を誰に渡すか、という点についても極めて柔軟に定めることができます。

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まとめ

以上のように、認知症の対策としては、法定後見、任意後見、家族信託の手法がありますが、本人の意思の実現、自由度の高さ、財産承継の利便性といった観点からは家族信託が最も優れていると考えられています。

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