実績紹介
認知症対策と生活費の確保。父親の認知症により自宅と貸家の管理ができなくなることを心配されたご長女からのご相談
2018/05/09
本件の特徴
1)遠方で暮らすご両親の認知症対策
2)ご自宅と賃貸物件の管理を信託財産に設定
3)受託者をご長女とし物件の売却権限を委ね、ご長男が信託監督人につく
ご相談内容
今回ご紹介する事例は、お父様(Y様)の認知症を心配されたご長女から相談を受けられた不動産会社の方からのご相談でした。
Y様は札幌市内の高齢者施設にお住まいで、元のご自宅の土地建物及びご自宅とは離れた場所にある貸家の所有者になっておられました。
ご家族としては、別の高齢者施設にお住いの奥様、いずれも関東に在住のご長女及びご長男がいらっしゃいますが、お子様方が度々、札幌に来てご自宅の管理を行うことに不便を感じるようになってきていました。
そのような中でY様の意思能力が認められなくなるとご自宅や貸家の管理又は売買が進められなくなるため、予め家族信託を設定してご長女に売却権限を委ね対処することが検討されました。
また、Y様の預貯金についてもお子様において管理を可能とするために信託の対象財産とすることが検討されました。
なお、Y様はこれらの他に原野を所有されていましたが、財産的価値が乏しいと判断されたため、信託の対象としないこととされました。
本件ではY様の認知症の症状が確認されている点が問題になりましたが、まだ初期段階であったことから、早急に手続を進める必要があると考えられました。
弊社のサービス
本件では以下のような流れで手続を進めました。
①ご相談の端緒
ご長女の方が、当社と懇意にさせて頂いている不動産会社の担当者の方と旧知の仲であったことから、この担当者の方からメールで本件の概要についてご連絡を頂き、ご長女の方をご紹介頂きました。
②初回面談
初回は当社の専門家が不動産会社を訪問してご長女及びご長男をご紹介頂き、面談を実施しました。
ここでご長女の方から、「今後の不動産の管理が不安である。」ということや、「生活費の管理についても心配している。」という内容のご相談を受けました。
ご長女の方は、家族信託について事前に調べてこられていたため、信託口口座の開設のことなど、やや踏み込んだ内容についてもお打合せができました。
③Y様との面談
Y様は判断能力に不安をお持ちとのことでしたので、信託契約ができるかの事前判断のため、弊社の専門家1名がY様をご訪問させて頂き、ご長男立ち合いのもとで財産の状況や今後財産をどのようにしていきたいのかをヒアリングさせて頂きました。
Y様はこれらのヒアリングに対して、耳が不調であったため、何度か同じ質問を受けながらも、不動産と預貯金の管理処分をお子様方に任せたいとの意思表示をされたため、信託契約の締結に問題はないと判断されました。
④信託契約の内容の調整
上記の内容で信託の概要は固まったものの、詳細については調整の必要がありました。
ご長女及びご長男が遠隔地に在住ということもあり、大半は当社の専門家との間でメールをやり取りして詳細を詰めていきました。
この結果、ご長女が受託者となり、ご長男が信託監督人となること、お母様の認知症の症状が進んでいることから帰属権利者をご長女及びご長男としてその割合を具体的に決めておくこと、信託口口座の開設を都市銀行ではなく札幌の地方金融機関とすることなどが決定しました。
⑤信託契約の締結
その後、委託者(Y様)、受託者(ご長女)、信託監督人(ご長男)の正確な住所を確認するための住民票、登記手数料を確定するための平成30年分の固定資産評価証明書、登記に必要な印鑑登録証明書と権利証をご用頂いた上、信託契約の締結日を迎えました。
今回は、Y様の預金の解約の関係があるために、Y様の預金のある金融機関で場所を借り、ご長女及びご長男の同席の上で、信託契約書に調印を行いました。
調印自体はスムーズに進み30分程度で完了しました。
⑥信託口口座の開設
また、同じ金融機関の支店に信託口口座を開設することとなっていたため、引き続いて口座開設の手続を行いました。
口座名義等については事前に金融機関に伝えていましたが、情報の伝達がうまくいっていなかった節があり、1時間程度の時間を要しました。
信託口口座を開設した実績のある金融機関であっても、支店によっては十分な情報がない場合もあるため、注意が必要であると感じました。
また、信託口口座を開設後、Y様の預金を信託口口座に移す手続を行いました。
これにより設定業務については完了しました。
家族信託の内容
今回のご相談で設定した家族信託の内容は以下の通りです。
信託財産:元のご自宅の土地建物、貸家の土地建物、預貯金(金銭)
委託者兼受益者:お父様(Y様)
受託者:ご長女(二次受託者:ご長男)
帰属権利者:ご長女、ご長男(各財産につき具体的に帰属するものを規定)
①受託者が元のご自宅及び貸家の管理を行い、必要に応じて信託監督人の同意を得たうえで取壊し、建替え、売却等の処分をできることとする
②Y様が保有していた預貯金を信託財産とするとともに、元のご自宅を売却した場合には受託者が売却代金を信託財産として管理し、施設費用など受益者のために必要な支払いをする
③Y様が亡くなった場合は信託を終了し、権利帰属者に財産を分配する