実績紹介
認知症対策・法人活用 所有不動産を法人に譲渡することで賃貸経営の安定的な継続が可能に
2018/05/25
本件の特徴
1)相続税対策と医療費負担軽減対策を同時に実現
2)お父様所有の賃貸マンションを法人(資産管理会社)へ譲渡し安定した賃貸経営を維持
<ポイント>
・所得税負担を抑えた売却スキーム設定
・譲渡に伴う費用負担軽減をワンストップにてカバー
※今回の事例紹介は、以前ご案内したT様に関するお手続きの続編となります。
◇T様に関するお手続き:正編はこちら
実績紹介「資産運用 相続対策 継続的な資産運用と相続を見据えた家族信託」
ご相談内容
T様のご要望の一つに、お父様が所有する賃貸マンション2棟について、法人(資産管理会社)に譲渡すること(信託ではなく通常の譲渡)で、今後の賃貸経営を法人の管理下で安定的に続けられるようにするとともに、お父様の税金や医療費の負担を下げたいというものがありました。
お父様は賃貸マンション2棟のほか貸家を複数戸所有しており、年間で2千万円ほどの賃料収入を得ていましたが、これによる次のような問題が生じていました。
①所得が高くなり所得税の負担が重い
②生活費としての使用を上回る賃料収入を得ており、財産が増加傾向にある。このため、将来的な相続税の負担がますます重くなる。
③一定以上の所得があるため、医療費の自己負担割合が高い。施設に入居しており、1割負担になることで大きく医療費負担を減少することができる。
T様はお父様が所有する物件のうち賃貸マンション2棟を法人に譲渡するご希望をお持ちの一方で、賃貸マンションの土地と建物を法人に譲渡することによる、(1)譲渡に伴う所得税(譲渡所得)の負担と(2)譲渡に伴う登録免許税と不動産取得税の負担を懸念されていたほか、具体的な譲渡の手続きが分からない状態でした。
これに対して、弊社ではまず以下のようなご提案を行いました。
(1)所得税の負担を抑えた売却スキームのご提案
本件では、土地が先代から相続により取得したものであり、取得価額が不明であったため、土地を譲渡対象に含めると多額の所得税の発生が見込まれるため、土地は譲渡対象とせずに建物のみを譲渡することとしました。
建物は鉄筋コンクリート造りで築30年ほどを経過していました。このため、減価償却が進み税務申告上の帳簿価額がかなり低い状態にありました。一方で、固定資産税評価額は未だ高い水準となっていたため、譲渡価額の決定に際しては不動産鑑定士の鑑定に委ねることとしました。鑑定評価の結果は、帳簿価額と固定資産税評価額から計算される相続税評価額の間の水準でした。
この金額での譲渡は、メリットとデメリットがそれぞれ発生します。
まず、デメリットとしては、帳簿価額を上回る水準での譲渡になるため、譲渡により所得税(譲渡所得)の負担が発生することです。そして、メリットは相続税評価額を下回る金額での譲渡であるため譲渡実行により相続税の負担軽減につながるというものです。これまで相続税評価1億円の建物を所有していたものが、8千万円で売却することにより8千万円の売掛債権に置き換わるため、相続財産が2千万円圧縮されるイメージです。(金額はイメージをお伝えするもので、本件の評価額とは異なります)
T様にはこれらのメリットとデメリットをお伝えした上で、鑑定評価額を譲渡価額として使用することにご同意いただきました。
(2)譲渡に伴う登録免許税と不動産取得税の負担
鉄筋コンクリート造りの建物の特徴として、固定資産税評価額が非常に高いため、法人へ譲渡する際には多額の登録免許税と不動産取得税が必要になるという問題があります。
これについては、建物を信託受益権化して法人に譲渡することで対応しました。
信託受益権化することで登録免許税と不動産取得税の税額負担は10分の1程度に軽減されました。また、
上記のようなご提案を基に、弊社では以下のように手続きを進めてまいりました。
なお、一部のサービスは専門仕業によって提供されており、弊社はそのアレンジ等を行っております。
1.法人所有とした場合の、所得税と法人税の変化に関するシミュレーションの実行
2.想定される鑑定評価額で譲渡した場合の相続税の変化と、譲渡実施後に発生する建物売却金額に相当する売掛債権の解消に 関するシミュレーション
3.不動産鑑定士による簡易鑑定評価の実施
4.譲渡に必要となる信託契約書及び信託受益権譲渡契約書の作成
5.信託契約書の締結並びに、信託登記及び受益者変更登記の実施
6.信託口口座の開設手続きのサポート
7.売掛債権の一部贈与に関する贈与契約書などの書類作成および、手続きのサポート
8.T様お父様の所得税確定申告書の作成
9.売掛債権の贈与に伴う贈与税申告書の作成
家族信託の内容
今回のご相談で設定した家族信託の内容は以下の通りです。
信託財産:賃貸マンション2棟
委託者:T様のお父様
受託者:T様
受益者:当初はT様のお父様。設定後に信託受益権を法人に譲渡