実績紹介
法人を受託者とした家族信託の設定
2020/03/10
本件の特徴
1)複数の賃貸マンションを対象に相続対策を提案
2)内容の異なる複数の家族信託を設定
3)家族信託を活用することで相続税対策を実現
4)法人を受託者として受益者連続信託の設定
ご相談内容
本件は金融機関を通じてのご相談でした。M様は札幌市内に複数の賃貸マンションを所有し、一部は法人で、一部は個人で所有していました。
賃貸マンションの運営については今後長男が引き継ぐことが家族内で決まっていたため、その内容で遺言書も作成していました。一方で、事業的規模にある賃貸経営について、M様は自身が病気による入院などで経営に空白が生じるリスクや判断力が今後低下していくことについて懸念し家族信託に興味を示していました。
本件では相続税対策を交えて内容の異なる複数の家族信託を設定しています。また、家族信託の設定により過去に作成した遺言書の内容と前提が異なる点が多く出たため、遺言書の再作成もしています。
ここでは、設定した家族信託の一つについてご紹介します。
お客様のニーズ
・保有する賃貸不動産について、建物は法人所有となっているが土地は個人所有となっているため、法人で一括して管理ができるようにしたい。
・今後建替えの可能性や新たな不動産取得に際して抵当権の設定が必要になることも考えられるが、自身の判断力低下により計画がストップすることは避けたい。
・極端な相続税対策は避けたいが、一定の対策は行いたい。
家族信託の設定
M様の相続に対する基本方針は、不動産事業の継続と発展を第一に考えて不動産は長男に一本化して承継し、他の家族には現金を遺すことを考えていました。
また、相続税軽減の観点から、相続税の配偶者控除を活用するため多額の金銭をM様の妻が相続する内容を予定していました。
これに対して、当社が提案したのは「土地の一部を妻が二次受益者となる受益者連続信託にする」ことでした。これによるメリットは以下の通りです。
- 従前のように多額の金銭を用意しなくても同様の効果が得られる。妻は税務上、二次受益者として信託財産を相続したものとみなされ、その財産に対して配偶者控除を受けます。これにより自由に動かすことが可能になる現金を新たな物件の取得に充てることができます。
- 家族信託には遺言書にはない二次相続指定の効果があるため、妻の死後に長男が土地を承継することを確実にできる。また、妻が受益者となる間も受託者(長男が代表を務める法人)が土地を管理するため、不動産事業に支障をきたさない。
- 信託する財産は地代収入のある土地のため、妻は二次受益者として地代収入を受け取ることができる。現金を相続した場合にはこれを切り崩しながら生活していくのに対し、安定的な収入を基に生活を設計できる。
信託財産:土地(賃貸マンションの建物は法人で所有)
委託者兼受益者:M様
二次受益者:妻
帰属権利者:長男
受託者:法人(代表者は長男)
信託の内容:
- 受託者が土地の管理をする。また、受益者の同意の基で売却や借入に際して抵当権の設定を可能とする。
- M様が存命中は地代収入を父親が受け取る。
- M様が亡くなった後はM様の妻が二次受益者となり、地代収入を受け取る。
- 妻が亡くなった際には信託を終了して、長男が土地を承継する。